2026-02-05
『ハッカーズ』
2009年に私が卒論として書いた『DiYとメディアアート』の中で度々参照したのがスティーブン・レビーの『ハッカーズ』であった
MITから始まり、Home Brew Computer Clubのギーク達の草の根的な活動に触れ、同時期にビル・ゲイツがAltair 8800用のBASICインタプリタを販売する様子も現在のIT業界に示唆的に思えた
その道筋の中にMacが置かれるのもまた興味深い
コンピュータはその歴史の中で常にエンタープライズなものと個人の能力を拡大するような二極が存在していると言えるのではないか
後者を利用した制作物や表現活動に着目したのが『DiYとメディアアート』のコンセプトの根幹であった
当時扱った対象にはGraffiti Research Labなど第一線で活躍していたメディアアーティストもいたが、
ニコニコ技術部やMakeなどのコミュニティや個人主導の活動も含んでおり、メディアアートとタイトルにはあるがなんらかのクリエイティブな制作活動、くらいの幅をもたせていた
Nomad Karaoke
それ以来このテーマについて考えたことはなかったのだが、前回の記事で触れた Nomad Karaokeへのコントリビュート でふと思い出した
Nomad KaraokeはGitHubのpublic repo上で開発されているOSSではあるものの、
実際にほとんどのコードは作者のAndrew自身によって書かれていて、個人開発に近いものだと言える
Hey! I'm a computer nerd who loves karaoke と自己紹介をしているくらいだから、カラオケが好きなんだろう
自分の興味関心のあるもので、世の中にちょうど良いものがないから自分で作ってみる、コンピュータを使って
このスタンスは『DiYとメディアアート』で書いたものそのものだと思った
2026年のコンピュータとDiY
2009年時点と2026年時点のコンピュータとDiYの関係を考えるにあたって一番の違いは間違いなくAI/LLMの存在だろう
自分自身コーディングにAIコーディングエージェントを利用することで生産性があがり、OSSへのコントリビュートや個人的なプロダクトを作ることができた
音声関連のOSSを見ていてもその中でAIが使われていることが常だ
アカデミックなリポジトリでは論文の実装がすすみ、そのモデルはNomad Karaokeのような個人プロダクトにも利用される
Tech系大企業によるorganizationの中にも同様の動きがある
アカデミア、ビジネス、個人開発をまたいだダイナミックな流れがそこに存在する
もちろんコードを書くことすら必須ではない、画像・動画・音楽... AI/LLMが出力できるものであれば制作の可能性は開かれる
これは2009年時点で自分が見つけた観点の再発見である
変わったこと、変わってないこと
2009年と2026年で何が変わったんだろうか
2009年当時のトレンドとしてはArduinoやブレッドボードを使った電子工作、個人でもてるものではなかったが3Dプリンタは出始めていた記憶がある
まだみんながスマートフォンを持っているタイミングではなかったが、SNSは盛り上がりをみせていて、
TwitterなどのSNSはさかんだったし、まだまだブログで情報を得ていた
2026年現在、トレンドはデバイスの工作からAIのプロンプトに移ってきているのかもしれない ただしこれは自分のウォッチしている範囲の問題な気がする、ハードウェアのDiYコミュニティもきっとある
そしてコミュニティもよりグローバル前提に、ローカルのコミュニティというよりもすぐに海外コミュニティとつながるようになった感覚がある
ソフトウェア界隈ではないが若いインディペンデントなミュージシャンがSNSで連絡をとりあった海外アーティストとすぐに楽曲をリリースする、というようなのを見るとそう感じる
とはいえ、本質は変わっていないように思う
自分にとってちょうど良いものがないから作ってみる、である