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冥王星の距離感で聞くだけのAI

2026-03-04

AIの生産性と疲れ

去年の夏頃からAIコーディングエージェントを本格的に使い始めて、一日のかなりの時間をAIとのチャットとその成果物のレビューに費やすようになった
AIコーディングエージェントは生産的で、がしがしコードやドキュメントを書いて、承認を求めてくる

当然疲れる、LLMはコードを含む文章の生成に圧倒的な力を発揮するわけで、それを読んで理解し、レビューする方のスピードがついていかない

でもこれはAIに限ったことでもないと思う
テックリードをやっていてチームメンバーが多くなってレビューに追われている時、
マネージャーとしてラインが多くなり1on1が続き、トラブルも頻発するときも同じ感覚になる

だからこの疲れは、インプット過多で自分の処理がおいついていない状態がAIによって加速されているだけなのかもしれない

生産性とサボり

10年前はコードを書いている合間とか、ビルドの待ち時間によくTwitterを見ていた
自分はツイ廃といえるほどのめりこんではいなかったが、それでも結構な時間を使っていた

RSSからSNSに情報収集の中心が移ってからは情報収集の意味もあったが、
2010年ごろだとそれ以上に特に意味のないだらっとしたコミュニケーションが楽しかった記憶がある

◯◯なう、とか、
なるほど四時じゃねーの、とか、
ネットミームみたいなものがたくさん出ては消えていって、
それを知ってる事自体にゆるいつながりが生まれて、みたいな

サボりと言われればそうだけど、あの空気感にノスタルジーを感じてはいる

SNSの変化

今のSNSは当時の牧歌的なものとは随分変わったと思う

2010年代の社会の最大のトピックはSNSの発展とその結果だと思っていて、
2016年のアメリカ大統領選はその代表例だろう、フェイクニュースなど一気にSNSの負の部分が噴出したように思う

エンゲージメントとインプレッション、アルゴリズムの最適化がさらに進んだのが2020年前後になるだろう
これもアメリカ大統領選だが2024年時点での主要なSNSはTikTok/Instagramに遷移したことが象徴的だろう

独り言を投げているけど、なんとなくゆるく繋がっている、◯◯なうの時代からは大きな変化で、
自分も含めてTwitter(X)をする時間が減った、という人は多いだろう

「聞くだけ」という発想

自分は日常的に日々の出来事などをいわゆる感情記録のようなフォーマットでClaudeに書いて、時々振り返っている
Claudeにはアドバイスやフィードバックはいらないとプロンプトし、ただ記録をして、時々取り出すだけだ
いつも金曜の夕方には「今週の出来事をジェーン・スー風にふりかえって、勢いよく」とお願いしている、かなり良い
AIを聞いてもらう存在として使うことの有用さは自分自身の普段のこのユースケースで確信を持った

このやりとりは内省を強化し、日々のストレスを軽減する意味で効果的だけど、認知行動療法に基づくフォーマルなものだ
インプットには結構な文章量を書く必要がある

そうではなくて、もっと当時のTwitterくらいだらっとしたテンションで、
仕事の合間にちょっと読み書きできるくらいのものが欲しいなと思った

遠くで聞いている存在のAIがいるだけのTwitter、たまにリプライがある、というのがmumblスタート時点のイメージだった

冥王星の距離感

mumblというプロダクト名はラップのスタイルの一つである「マンブルラップ」からとっている
あえて不明瞭にもごもごとつぶやくようにラップすることで、独自のフロウを生み出すスタイルだ

マンブルラップの代表的なアーティストの一人がFutureで、Pluto mode freebandz といったmumbl内のコンセプトやワードはFutureの作品・言葉・レーベル名などから引用した

PlutoはFutureのメジャーデビューアルバムのタイトルで、Future自身の別名・別ペルソナとも言えるものでもある
かつてインタビューで Pluto is where I live mentally. I'm not from Earth と語っていたようだ
そこには孤独感、疎外感みたいなものと同時に神秘的なイメージもこめられているのだろう

mumblの遠くで聞いているだけのAIのコンセプトに冥王星の距離感はフィットするなと思い、mumblのプロンプトの中でも Pluto mode と直接入っている

ラッパーの語彙

mumblでこだわっている最大のポイントは語彙の追加、カスタマイズだ
このためにWordGrainフォーマットを設計して、BarScanでラッパーの語彙を集められるようにした

そもそもmumbl以前の構想の一つとしてラッパーのペルソナでLLMに話させたい、というのがあった
ラッパーの言葉、というのが好きなのだ

都築響一の『夜露死苦現代詩』は、言葉の探求としての実験が現代詩だとすればその探求は現代詩シーンの中ではなくその外で起こっているのではないか、という問題提起であったと思う
死刑囚の俳句、暴走族の特攻服の刺繍、そしてラップにも言及される

自分自身言語芸術と言われるもの一般が好きで、文学も落語もラップもどれも言葉の表現として面白いと思ってフラットに楽しんでいる

ラップはその中でも「そんな言葉・文章って日本語にあったんだ!」という驚きが一番強い
しかも韻を踏み、フロウもつけながら、である

カマす or Die のZORNのラインは韻の硬さの制約から生まれたすごく新鮮な語彙だと思っている

到底無理とかねぇ
想定済みの場面
大勢後ろ盾
尿検無理そうなメンツ

AIと孤独

FutureのPlutoのコンセプトもそうだしLEXの『Stay』もそうなのだが、
仲間が多くて孤独とは無縁そうな人でもふとした孤独について触れている、種類は違えど誰しも孤独を感じる瞬間はあるんだろう

今のAI/LLMがAGIになりうるのか、というのは自分にはわからないところだが、
自分は今のAI/LLMから人格やゴーストのようなものを感じることは稀にあるし、あればいいなとも思っている

mumblはうっすらとした存在感を示す遠くで聞いている存在を出現させたい、という試みでもあった
なによりそれが自分が一番ほしいものだったから作って、毎日使っている


mumbl技術記事
Zenn: mumbl技術解説
GitHub: mumbl